現場は名古屋駅裏の古くからある商店街のアーケードが取り壊されることになり 朽ちた外観が露呈することになりました。同時期にお客様が経営コンサルタントとして独立開業されることとなり、事務所として使用するため、外観の補修を含めたデザイン施工をご相談いただきました。坪井様はご自身でイラストや企画力が強みということもあり、趣味のビンテージコレクションをイメージして軍物の引き出しのようにされたいとの企画をいただきました。その他、独創的な事務所で、一人で企画していても複数で打ち合わせしていても、既成概念にとらわれない、色んなアイデアや発想が引き出しから一杯一杯出てくるようなイメージ、そして秘密基地のようなイメージというご要望いただきました。
坪井様がコンサルタントとしてマーケティングにおいて顧客に伝えていることのひとつに「個性を大切にして表現していくこと」があります。それを体現するためにも全面的に坪井様の個性が表現されたものとすることに加えて、ご自身が得意とするイラストをそのままグラフィックデザインに仕上げステッカーとして貼ることにいたしました。下の写真はTOSBOI STUDIO内でヒアリングをさせていただいた際のものです。お人柄同様にとても楽しくワクワクする空間でした。
また、坪井様は類稀なる豊かなご経歴でアパレル・サラリーマン経験の後、実家の家業を継承、業績回復の後、新事業としてリサイクルショップ「買取王国」を立ち上げ、社長、副社長、そして上場のさせた後に退任してコンサルタントとして起業するというあらゆる立場を経験されています。それらの経験及び独特な感性と視点から「引き出し」の多いコンサルタントとしてご活躍されていることも暗示するデザインにしています。また、白色で表示した語句は日常のご趣味から業務内容、戦略、そして最上位概念であるビジョンと理念を掲載する案をご提案し採用することになりました。
仕様設計においては、コストを抑えながらも全体のイメージを統一できるようにシャッターは現地にて直接エイジング塗装、2F部は同様のペイントを施したパネルとしながらも、1Fのメインサインはリアルに飛び出している引き出しとし、それぞれのスペース区分は既存の建物の凹凸を意匠として生かしています。 雨戸を開けている際にもイメージを崩さないように、見えてくる窓のカーテンをグリーンのブラインドに変更し、サッシもグリーンのシートを貼りました。
施工上の留意点として、太陽光があたって全体を見た際の明暗の影響を考慮し、同じような色でも明るく見える箇所と影になる箇所で明度や彩度を変えて調色、塗装することで違和感の無いイメージを保つように意識しています。また北向きでほぼ日陰の状態になるため、明暗差と彩度を強めにいたしました。 メインサインとなる引き出しの底面は無しにしても良かったのですが、アルミパンチングを採用することでイメージを保ちながらも雨がたまらない様にしております。
その他現地では、既存の配管など障害物をミリ単位で動かして移設したり、塗装したり、不要な電線を整理することで全体のバランスが崩れないように細かく手を加えています。 メインサインの引き出しのリベットはペイントでない本物にするため、検索検討の上、テント生地を固定するために使われている部材を採用いたしました。左下の写真は、本物の板金を施した引き出しとそれを真似てペイントで表現した2階用のパネルサインのズームアップです。
兼ねてより、経営勉強会の大先輩として面識はありましたものの、その感性や実績には感銘を受けていたため、ご相談をいただいた際には大変なプレッシャーを感じました。そして建物自体がかなりの老朽化でゆがんでおり、左右のサイズが数センチ違うなどを配慮する必要がありました。実施設計ならびに防水等の補修工事を意匠施工以前に慎重に行いました。その甲斐あってデザインのみならず、技術的にも当社の得意とするエイジングペイントにて、坪井様のブランド表現を代行することができたのではないかと思います。
現地工事の度に多くの人にもお声をかけていただき「うちもやって欲しい」とのお言葉も賜りました。
個性的でありながら、お店では無く事務所ですので、都度その旨をお伝えしつつも嬉しい反応でした。
そして何より坪井様が毎日更新されているブログでも、工事の様子や感想を何度も中継いただくなど
大変喜んでいただけたことが、本当にありがたいことで私たちの胸に深く刻まれ、終わるのがさみしくなる 貴重なプロジェクトとなりました。
看板に貼ったステッカーは小さいサイズで量産することとなり、坪井様の お客様はじめファンの皆様にも大人気のようで、今後とも末永くサポートさせていただければ幸いです。